TECHNOLOGY技術情報

液中プラズマとは

液体中に高密度のエネルギーを与えてプラズマを発生させる技術のことを「液中プラズマ」と呼びます。
真空プラズマや減圧プラズマよりも反応が高速で、溶液反応を活用できるといった特徴があります。例えばナノ粒子の生成や、カーボンナノチューブへの水溶性付与などに液中プラズマの技術は応用されていて、今も新しい材料や加工場を作り出す研究が進められています。液中プラズマ製品一覧はこちら

液中プラズマの特徴

■液体とプラズマの反応場がつくり出せる
■反応が高速である
■反応場の温度が比較的低温である

最も簡単なプラズマ発生装置は電極を対向させ、そこに電力を投入するといった方法です。
プラズマにはラジカル、電子、紫外線が存在しますが、液中プラズマはそれらを液体に作用できる「新しい反応場」として今注目されています。

放電の形態

絶縁破壊すると放電しプラズマが生成されますが、放電電圧と電流によって形態が変化します。アーク放電は溶接の分野で使われるアーク溶接と同じで、高融点の金属を溶かすほどの熱が発生します。一方グロー放電はアーク放電ほど発熱しません。この違いから、液中プラズマの分野では電極の消耗や液体の温度上昇を考慮し、グロー放電がよく使われています。

パルスグロー放電

プラズマを連続して発生し続けると、初めはグロー放電であったプラズマが液体温度、電極温度の上昇に伴いアーク放電に移行してしまいます。一度アーク放電に移行してしまうと急激に電極は消耗し、溶液温度も急上昇し、再度グロー放電に戻すことは容易ではありません。
パルスグロー放電とは、アーク放電への移行を阻止するため、連続ではなく一定周期で放電をON/OFFさせることによりグロー放電を維持するという方法です。弊社の液中プラズマ電源はこのパルス放電に特化した電源となっております。

当社液中プラズマ発生装置について

液中プラズマを発生させる方法として、レーザー、マイクロ波、高周波(RF)等がありますが、栗田製作所では前述のグロー放電を維持、制御が容易であるパルス電源を製品ラインナップしています。
パルス電源では液体の導電率と電極間距離を調整することにより、極めて簡単に少ないエネルギー(数百W)から液中プラズマを発生させることができます。また、ユーザー様によってプラズマ反応器(リアクター)は多種多様であるため、オーダーメイドも承っています。

主な特徴

・電極間距離にかかわらず、液中にてプラズマを生成可能
・パルスグロー放電を採用し、低温での処理が可能
・電極の損耗を低減し、長時間運転を実現
・数百ワットの低電力からプラズマを生成可能
・大出力タイプを揃え、実験用リアクターセットも用意

液中プラズマをハイスピードカメラで撮影


ハイスピードカメラで液中プラズマを撮影 20000コマ/秒

ハイスピードカメラで液中プラズマを撮影 5000コマ/秒

エタノールによる液中プラズマ

液中プラズマの応用例

塩化金酸を純水及びSDS(ゼラチン)溶液で溶解し、液中プラズマ処理を行うことで、10~50nm程度の金ナノ粒子の生成が確認されました。
金はナノ粒子化することで、黄色から赤色に変色する事が古くから知られており、色の面からもナノ化を確認できます。金ナノ粒子は医薬品やセンサー、触媒などに応用が期待されています。

ソリューションプラズマ放電…金のナノ粒子化

名古屋大学 高井研究室による実験結果

< 試験条件>
・超純水150ml,約20℃
・電源装置
パルス電源400V(電流のみプラズマ発生せず)
パルス電源800V(プラズマ発生)
・電解質 KCl,NaCl,Na2SO4,CH3COONa

液中プラズマにより劇的な殺菌効果が確認されました。
特にNaCl,CH3COONa溶液ではプラズマ発生により初めて殺菌が確認されました。

メチレンブルーの分解

液中プラズマの用途

液中プラズマは現在主流のプラズマプロセス(真空プラズマ、減圧プラズマ、大気圧プラズマ)にはない、液体とプラズマを反応させる新しい反応場です。その新規性、高速反応性から様々な分野での研究・開発が行われています。以下はその一例となります。

ナノ粒子の生成
・触媒効果…排ガス処理
・抗菌作用…抗菌剤
・化粧品素材…紫外線対策
物質の表面改質
・カーボンナノチューブ親水化…樹脂の高強度化
・ナノインク親水化…導電性付与
滅菌/殺菌
・大腸菌の殺菌
・黄色ブドウ球菌の殺菌

リアクターの開発

液中プラズマに関わらず、プラズマを利用した装置で最も難しいのはリアクターの開発だと考えています。弊社では液中プラズマ電源の拡販、液中プラズマのシステム化を目的に、リアクター開発に日々取り組んでいます。下の写真はその一例です。

ラボ用循環式リアクター
バッチ式 流水リアクター
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